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東京地方裁判所 昭和27年(ワ)8990号 判決

原告 ゲツツ・ブラザース・エンド・コンパニー

被告 株式会社安部貿易商会

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(双方の申立)

原告訴訟代理人は、「被告は原告に対し、金一、二九六、〇〇〇円及びこれに対する昭和二七年一二月二四日より右支払ずみに至るまで年六分の割合による金員を支払うべし。訴訟費用は被告の負担とする」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被告訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

(原告の主張)

一、原告は、物品の輸出入を業とするアメリカ合衆国の商事会社であるが、昭和二七年八月二七日、被告との間に日本において左の売買契約を文書をもつて締結した。

1、売主被告、買主原告。

2、目的物……冷凍めかじきまぐろ(冷凍スオードフイシユ)二〇トン。但し、一トンは二、〇〇〇ポンドとする。

3、代金……FOB日本港船舶渡し総額八、四〇〇ドル(単価一ポンドにつき二一セント)。

4、引渡方法……昭和二七年九月中にサンフランシスコ向け日本港を出帆する船舶に積み込み引渡のこと。

5、代金支払に関する定め……原告は被告のため取消不能の信用状を設定し、被告は船積とともに右信用状により関係書類を呈示して当該銀行から代金の給付を受けること。

二、そこで、原告は被告のため即日香港上海銀行サンフランシスコ支店との間に確認済取消不能の信用状設定の手続を了して信用状を発行させ、翌二八日確認銀行たる右銀行東京支店よりその旨を被告に通知したのである。ところが同年九月三日に至り、被告から原告に対し、前記契約条項四項を「九月中に一〇トン、一〇月中に一〇トンを船積して引き渡すこと」に変更方の申し入れがあつたので、原告はやむなくこれを承諾し、右信用状の記載にもその旨の変更を加えた。

三、しかるに、被告は右変更条項どおりの履行をしないので、原告は同年一一月七日被告に対し、同月一四日までに右履行をなすベく、右期限までに履行しないときはこれを条件として前記売買契約を解除する旨の催告並びに条件付契約解除の通知を発し、右通知は翌八日被告に到達したにもかかわらず、被告はなお右を履行しないため、本件売買契約は右一一月一四日の経過とともに解除されたものである。

四、原告は被告の右不履行により次のような損害をこうむつた。すなわち、原告は、被告が少くとも右催告期間の満了までに右債務を履行したならば、目的物件を他に処分して得たであろう売上金額から本件売買代金相当額を差し引いただけの利益を得ることができなかつた訳であつてこの点は被告においても充分予見し得ることであつたところ、右得べかりし利益の評価額は、本件商品の右解除当時のアメリカ合衆国市場における相場が一ポンドにつき三〇セントであつたから本件契約における単価一ポンドにつき二一セントとの差額は一ポンド当り九セントとなるので、これを本件商品の総量に乗じた額は三、六〇〇ドルとなるところ、当時の公定国際為替相場は一ドル三六〇円であつたから、この割合により右三、六〇〇ドルを換算すると、右得べかりし利益、すなわち原告のこうむつた損害の評価は邦貨額にして、一、二九六、〇〇〇円となる。

したがつて、原告は被告に対し、右金員及びこれに対する本件訴状が被告に送達された日の翌日である昭和二七年一二月二四日より支払ずみに至るまで商事法定利率による年六分の遅延損害金の支払を求める。

五、被告主張五の事実は争う。

先ず、被告の本件債務はその履行期において履行可能な状態にあつたものである。なるほど、わが国からの輸出にあたり被告が主張するような手続が一般的に存在することは認める。

しかし、先ず、原告の信用状設定等の手続がおくれたから、被告の信用状入手がおくれてこれに対する適切な措置を執ることが困難になつたということはない。原告は昭和二七年八月二七日本件契約を締結するや直ちに信用状の設定、発行の手続を了し、確認銀行よりこれを被告に通知したのであつて、信用状は右通知があれば直ちにこれを受領し得るのであるから、被告が同年九月三日に至つて始めて信用状を受領したというのはひとえに被告の怠慢の結果に外ならないのである。

次に、信用状の記載の点については、その記載が被告主張のようであつたことは争わないが、本件契約五項の内容は原告主張のとおりであるから信用状の記載が契約内容と異るということは直ちにいえないのみならず、被告の主張する代金額の点については、先ず契約ではFOB価格となつていても、信用状においてこれに運賃を加えたC&F価格を記載することはむしろ当然のことなのである。けだし、商品、殊に冷凍魚の運送を依頼せられた船会社は運賃の先払を受けなければ当該商品の船積を認めないのであつて、冷凍魚を輸出する場合に運賃を先払いすることは商慣習となつているのである。したがつて、半年、一年といつたような先物売買でない限り、売主たる輸出業者がその輸出許可を申請する場合に運賃込の値段で申請することもまた商慣習となつている。本件の場合も原告はこの商慣習にのつとり運賃込のC&F価格による信用状を設定したのであつて、被告もまたこれによることを諒承したからこそ本訴提起に至るまでただ価格の調整のみ主張して、信用状がC&F建となつていることにつき別段異議を述べなかつたのである。のみならず、価格の計算関係をみても、契約ではFOB八、四〇〇ドル、本件信用状ではC&F一〇、一〇〇ドルとなつているところ、本件商品の日本港よりロスアンゼルス港までの運賃は一、七八五ドルである(本件商品の正味重量たる二〇トンに包装用風袋の重量たる右の五パーセント分、すなわち一トンを加えた二一トンに対し、一トン当り八五ドルの運賃を乗じた額である)から、右契約額たる八、四〇〇ドルに右運賃一、七八五ドルを加えた一〇、一八五ドルが本来信用状に記載せられるべきC&F価格であつたのである。したがつて、被告としては、本来一〇、一八五ドルの信用状を受け取り得たのに、一〇、一〇〇ドルの信用状しか入手できなかつたことは確かであるけれども、右は、本件契約による商品代価にはなんらの関係なく、ただ運賃計算における見積等の手違いから起つた僅少の相違にすぎないのである。そして、このような僅少の相違は次に述べるように結局本件商品の輸出のさまたげとはならない。

すなわち、確かに右のままの信用状では被告のいうように銀行の認証、したがつて通関の許可は得られないけれども、この点についての解決策としては、被告から原告に対し信用状の訂正を求める以外に途がない訳ではなく、むしろその前に二、三の解決方法があるのであつて、先ず被告の執り得る手段としては、第一に次のような商慣習及び信用状に関する取扱によつて事案を処理し得る。すなわち、対米冷凍まぐろの輸出取引においては目的物の数量について五パーセント増減無異議の慣習が存在し且つ本件契約においてもこれを排斥する特約の如きものはなかつた。また、本件信用状においては数量の増減を許さない旨の記載がないから、商業信用状に関する統一規則及び慣例(一九三三年国際商業会議所ウイーン会議採択、以下信用状統一規則という)三五条(別紙のとおり)の二項により全数量の三パーセント以内の増減が許容せられる。ところで、本件契約の目的物はもとより可分で被告の債務は分割給付が可能であるところ、本件信用状における不足額は八五ドルであるから、これを正味のまぐろの重量に換算すると四〇五ポンドに相当し、契約重量四万ポンドの一、〇一二五パーセントにすぎず、したがつて、被告は船積の際右許容の範囲内である約一パーセントの減量をすることができ、且つこれさえすれば輸出申告書の認証及び通関の許可を受けることができるのである。被告は、冷凍魚の売買は、商品自体からみれば可分債務関係といえるが、輸出貿易の商品として扱われる場合には貿易手続の諸段階を経ることによつて分割給付関係を全く離れてしまうから右のような減量船積というようなことは考えられないというが、たとえ輸出貿易の商品として取り扱われる場合においても、当該契約に関し信義則に従い減量を排斥する旨の特約または慣習が存在せず、また、信用状において慣習上何パーセントかの減量が認められている場合には、貿易手続の諸段階を経る場合においても右の限度において分割給付は可能であるから、この限度内においては減量船積も可能である。また、被告は、信用状における数量の表示の前にapproximately (概ね)なる文字の記載がない以上は厳格に信用状記載の数量の船積がなければならぬというが、前記信用状統一規則三五条によればabout (約)circa (大凡)又はこれと類似の文言があるときは一〇パーセント、それがないときは三パーセントの増減が認められているのであるから、本件信用状において前記approximately 又はそれと類似の文言がなくとも三パーセントの増減は可能である。被告の執り得る第二の方法は、被告が外国為替銀行に対し、その取引銀行の保証付の保証状を提出するか、または、先ず輸出申告書を提出し外国為替銀行が信用状開設銀行に電話で手形買収許可方を照会してそれが許可せられたかのいずれかの場合には、被告が原告及び本件開設銀行たる香港上海銀行サンフランシスコ支店と交渉すれば、原告会社は信用のある有数な会社であるから、容易に輸出申告書の認証を受け得るのである。

次に原告の執り得る手段としては、買主たる原告側からその信用状により代金を決済する銀行に対し直接信用状における不足額を積み立て同行の承認を得るときは、売主たる被告は右銀行より完全に売買代金全額の決済を受け得るのであり、この方法によつても被告は輸出申告書に認証を得ることができるのである。以上のように、本件信用状の記載金額におけるわずかな不足は結局本件輸出のさまたげとならないのであつて、本件信用状の記載の訂正をまつまでもなく、被告または原告が右のいずれかの方法をとるときは輸出申告書への認証が与えられるのである。しかも、被告の執り得る方法は被告が誠意をもつて行いさえすれば可能な方法なのであるから、本件信用状にくい違いがあり、または、原告が右くい違いの訂正をしないというが如きはなんら「本件信用状に認証が与えられず、したがつて輸出行為すなわち被告の債務履行行為が不能である」との理由にはならないものである。そして、このことは、原被告間の従来の取引において双方異議なく承認し且つこれにより手続も円滑に行われてきたところの解決方法なのであつて、被告が今に至つてこれを云々するのは何らか為にする議論であるというの外ない。

仮りに原告に本件信用状に関しいくらかの不履行があるとしても、これはその全体の契約高に対してわずか一パーセント内外にすぎず、被告としてはこのような原告の僅少の不履行をとらえて自己の義務に属する全部の履行を拒むことはできず、その拒み得るのは右不足額に対応する部分に限られるものである。

次に、被告の主張する手形の点については、原告は被告との間に手形の満期について一覧払とする約束をしたことはない。のみならず、元来信用状に基いて売買代金受領のため売主の振り出す手形はその目的ならびに文言によるもただ代金決済のための手段として振り出されるにすぎないから、売主において完全な履行をなす限り将来その手形について償還義務を負うことがないのであつて、その手形を一覧払とするか或いは一覧後定期払とするかは手形決済の責任者たる買主と信用状発行銀行との間で適宜決定すべき事項であり、その如何が売主たる被告の利害に影響を及ぼすことは全くないのである。被告は、一覧後六〇日払の場合においては一覧払の場合に比し手形割引の際割引料において損失を受けるというが、本件取引においては、信用状にも明記されているとおり割引料は買主たる原告が負担することとなつているから、被告は手形割引の際割引料を差し引かれることがないのであつて、この点において被告が損失をこうむることは全くないのである。また、被告は、原告が右六〇日間に支払を拒否する事態が起ることも予想され得るというが、原告会社は信用ある有数商社であつて、そのようなことはおよそ理由のないことである。したがつて、本件信用状が保証する手形が「一覧後六〇日払の為替手形」となつている点もいささかも被告に不利益を与えるものではない。

以上要するに、本件信用状の記載内容、殊に被告の主張する代金額及び手形に関する記載内容は結局なんら被告に不利益なものではなく、原告においてあえて訂正をしなくても被告が所定の手続さえ履めば当然輸出申告書に対する認証及び通関の許可が与えられたのであるから、被告の債務の履行が約旨に定めた期限までに不可能であつたということはない。しかるに、被告は、上記のように履行期を「九月中に一〇トン、一〇月中に一〇トン」と変更することを申し入れてきたのであるが、原告としてはあえてこれに反対する程のこともなかつたし、また、右の如く船積を二回に分割するときは、少くとも第一回の船積に対しては、本件冷凍魚の代価が信用状における価格を超過しないこととなるので銀行の認証、通関手続及び代金決済が容易に得られるから被告もこれを履行すべく、さすれば原告としても右の被告の履行状況により第二回船積に対する適切な対策をたて得る利便があつたので、被告の右申し入れを承諾して信用状にも右の旨の訂正を加えて被告の履行を待つたのである。ところが、被告は、右のように履行の可能な第一回の船積をすら履行する気配もないので、原告としては、被告が契約履行につき誠意を有しているか否かに疑問を抱き、その真意を確かめるため同月二二日頃一応本件信用状の返還を求めたところ、被告は任意これを返還してきたのであつて、これにより被告に本件契約を履行する意思のないことが確定的に明らかになつたのである。すなわち、被告は、その債務が履行期において履行可能な状態にあつたにもかかわらず、これが履行をなさないまま最後にはついに一方的に履行の意思を抛棄して右履行期を徒過したものであつて、右が債務不履行にあたることは明らかなところである。

(被告の答弁)

一、原告主張一の事実につき、原告がその主張のような会社であること及び原被告間に昭和二七年八月(日の点は後述する)原告主張1ないし4(5の点は後述する)のような内容の売買契約が締結されたことは認める。右契約は同月二五日口頭をもつて成立したものである。また、右契約条項五項の内容は、「原告は被告のため取消不能の信用状を設定するについては、それは契約締結後直ちに行われること及びそれは被告振出の一覧払為替手形の引受支払を保証するものであつて且つ右契約内容に合致するものであることを要する。しかして、原告は被告をして同月二八日までに必ず右信用状を入手せしめるよう手配すること」となつていた。

二、同二の事実は認める。しかし、原告は被告との約旨に反し信用状の設定手続を契約締結日たる同月二五日後直ちに行わすこれを遅延したため、結局被告が原告本人より信用状設定完了、発行済の通知を受けたのは同月二九日になつてからであり、また、被告が原告から本件信用状の裏書交付を受けたのは更にその後である同年九月三日であり、しかもその記載内容は、後述するように、重要な部分において契約内容とくい違うものであつた。また、右九月三日に被告が原告に対して申し入れた変更事項の内容は、後述のように、原告主張の分割船積の点に留まるものではない。

三、同三の事実については、本件契約が昭和二七年一一月一四日の経過とともに解除せられたとの点をのぞき、すべて認める。

四、同四の事実は争う。

五、被告の主張は次のとおりである。

本件被告の債務はその履行期において被告の責に帰すべき事由によらず履行可能な状態になかつたから、被告は債務不履行の責を負わず、したがつて原告の(本件契約解除を前提とする)損害賠償の請求は理由がない。すなわち、本件契約における被告の債務は、原告よりの信用状を得たうえ、一定期限までに所定の商品を原告宛輸出のため船積することにあるところ、輸出貿易管理令(昭和二四年政令第三七八号)及び同管理規則(昭和二四年通産省令第六四号)によれば、わが国の輸出業者は個々の輸出にあたり、外国為替銀行の認証を得た輸出申告書を輸出港税関に提出して通関を許可されなければ輸出をすることができない。しかして、その際、右外国為替銀行はわが国の輸出業者を保護するため、当該輸出取引に関する契約内容とそれに関する信用状の記載とか一致しなければ右輸出申告書に認証を与えず、両者がくい違つている場合、殊に契約における代金総額が信用状に記載せられた支払保証金額を上回つている場合には絶対右認証をしないから、この場合には税関もまた通関を許可せず、したがつて結局輸出業者は右のような場合には輸出をすることができないのである。

ところで、本件の場合、原告は被告に対して、被告主張の本件契約五項の趣旨に違反して契約締結後直ちに信用状の設定、発行、通知の手続を執らず、ために被告が本件信用状を入手したのが遅れたので、被告は後記のような不備な信用状について適切な措置を執ることが困難になつたのみならず、原告が開設した本件信用状の記載によると、右契約条項五項の趣旨に違反し、本件売買代金につき「C&F日本港よりロスアンゼルス港までの運賃込総額一〇、一〇〇ドル」となつており、また、その保証する手形は「被告振出の一覧後六〇日払の為替手形」となつている。

先ず右売買代金の点については、契約ではFOB建となつているのに右信用状ではC&Fと勝手に変更されているのみならず、C&F建だと、仮にこれによる金額が契約における商品代価及び運賃を過不足なく包含したものであつたとしても、FOB建にくらべ、船積の日より手形一覧の日までの運賃にあたる金額の分の手形割引金利及び外国為替相場の較差金にあたる分だけ売主たる被告が不当に損失をこうむることとなる。また、代金総額につき、契約では八、四〇〇ドルとなつているのに対し、右信用状では運賃込一〇、一〇〇ドルとなつているところ右運賃は一、八一九ドルである(本件商品の重量は、契約によると二〇トンであるが、これを船積して運送する際には商品たる冷凍めかじきまぐろの表面を覆う氷層及びこれを包装する風袋の重量が加わつて標準約七パーセントの増量となるので、その重量は二一、四トンとなるところ、日本港よりロスアンゼルス港までの運賃は太平洋運賃同盟の協定によれば当時本商品につき一トン八五ドルであつたから、右二一、四トンに右八五ドルを乗ずると右一、八一九ドルとなる)から、前記一〇、一〇〇ドルから右運賃を差し引けば本件商品の代価は八、二八一ドルとなり、上記契約における代価八、四〇〇ドルよりも一一九ドルも低額となつていて被告に著しく不利である。のみならず、これによつては外国為替銀行の認証が得られず、従つて通関手続もできないから船積不能に帰するほかないのである。

原告は、この点につき、被告側において商慣習及び信用状統一規則(前出)上認められている範囲の減量船積をすることによつて輸出申告書の認証、通関の許可が与えられるというのであるが、原告主張のような信用状統一規則の存在することを認める外はすべて否認する。そもそも本件商品たる冷凍魚の売買は、その商品自体からみればなるほど可分な給付を目的とするものとして右のように減量船積ということも可能のようにみえるけれども、これを輸出貿易の商品としてみた場合にはそうではない。すなわち、輸出貿易においては、商品の輸出なる債務履行は、契約-信用状開設-輸出申告書の認証-税関の許可-手形の支払などの諸段階を経過することによつて可分な給付とは全くいい得なくなつてしまうのである。けだし、前にも述べたように、もし信用状の金額が契約の金額よりも少いときは銀行の認証以下の手続が全く進行しないから、右金額の不足は、たとえそれが一部であつても、船積をする側からみれば全部不足と選ぶところがなく、すなわち右信用状と契約の金額一致に対応する限度で分割船積をするというようなことはあり得ないのである。したがつて、減量船積というようなことを考える余地はあり得ない。のみならず、本件信用状には、契約の諸条件と信用状の条件とが厳格に一致しないときは信用状発行銀行は代金の支払をしない旨明言した付箋が付されている。また、仮にこのような付箋がなくとも、貿易商慣習として、本件信用状のようにその数量の表示の前にapproximately (概ね)なる文字の記載がない以上は厳格に信用状記載の数量の船積がなければ支払を受けられないのであつて、原告のいう減量船積は以上いずれの点からみてもこれを被告の義務づけることは不可能なことといわなければならない。なお、原被告間においては、信用状における金額が契約金額に不足する場合、従来右の方法等によつて事態を処理してきたとの原告主張は否認する。

そこで、このような場合には、信用状を訂正することによつて、事態を解決できるのであるが、仮に信用状を訂正しないで船積する方法があるとすれば、それは(イ)原告側から被告の決済銀行に右不足額を為替送金する方法(ロ)原告会社の東京支店から不足額の外貨払小切手を発行する方法の二方法しかない。そしてこれが法令に定める標準決済方法である。しかるに原告は自ら右信用状の訂正を拒みながらこれに代るべき右二方法のいずれをもとらず、その意思すらなかつた。その結果被告は本件船積が不可能になつたのでありその被告の責に帰すべからざることは前同様である。

次に、本件信用状の保証する手形の点については、契約では「一覧払為替手形」となつているのに、右信用状では「一覧後六〇日払の為替手形」とこれまた勝手に変更されているのみならず、一覧後六〇日払の手形たと一覧払の手形に比し手形割引の際被告が割引料において損失を受けることが明らかであり、また、その六〇日の間に買主たる原告がなんらかの故障を申し立てて信用状発行銀行を通じての支払を拒否するような事態が起り得ることも予想され得て、要するに売主たる被告の負担を六〇日分も不当に増大する結果となり被告に著しく不利である。

以上要するに、原告が被告に交付した信用状は、その記載内容の重要な部分において契約条項と相異するのみならず、その相異する点は売主たる被告にとり著しく不利である。そこで、さきに述べた如く、このように信用状の記載が実際の契約内容に比し売主、すなわち輸出業者たる被告にとつて著しく不利な場合には、たとえ被告がその債務を履行するため本件に関する輸出申告書を外国為替銀行に提出しても右銀行はこれを認証せず、したがつてまた本件商品の輸出についての税関の許可をとることもできないから、被告の債務の履行、すなわち本件商品を期限までに船積することは、右信用状の記載に所要の訂正が加えられない限り不可能な状態になつたのである。そこで、被告は、本件信用状を受領した昭和二七年九月三日直ちに原告に右の旨を告げ、至急取引銀行に対し信用状の記載を、同日より三日以内に必ず訂正せしめる措置を執るよう申し入れるとともに、船積の期限も繰り延べざるを得ないことを申し入れ、原告もこれを承諾したのである。しかるに、原告は、信用状の記載につき、後者の繰り延べの点について原告主張二の事実のように訂正をなさしめたのみで、前者すなわち代金及び手形の点についてはなんらの訂正をもなさしめなかつたので、被告はやむなく船積の手続がでないまま原告が右の点をも訂正することを期待してこれを待つていたところ、同月二二日頃に及んで原告は被告方より右信用状をなんら首肯すべき理由もなく持ち去つてしまつたので被告は信用状をすら外国為替銀行に提出できなくなり、結局被告はその債務を履行期において履行することができなくなつたのである。すなわち、被告の債務はその履行期において被告の責に帰すべからざる事由により履行不能の状態になつたのであるから被告に債務の不履行はなく、したがつて、原告の被告に対する契約の解除はその効力なく、また、損害賠償の請求にその理由がないものといわなければならない。

(立証)

一、原告

1  書証……甲第一ないし第七号証を提出。

2  人証等……証人井出正二、同芝田喜男、鑑定証人稲脇修一郎、同三井高実の各証言を援用。

3  乙号証の認否……乙第一、二号証、第三号証の一、二、第四ないし第一〇号証、第一三号証の成立を認め(第一号証、第三号証の一、二、第五号証については原本の存在をも認め)、第一、二号証、第三号証の一、二を利益に援用し、第一一、一二、一四号証の各一、二の成立は不知と述べた。

二、被告

1 書証……乙第一、二号証、第三号証の一、二、第四ないし第一〇号証、第一一、一二号証の各一、二、第一三号証、第一四号証、一、二を提出し、「乙第九号証は乙第三号証の一の付箋である。また、乙第一四号証の一、二については、各approximately なる記載のみを証拠として提出する」と述べた。

2  人証等……証人井出正二、同小寺信儀、同林昇太郎、同吉岡純一郎、同雨宮武失の各証言、被告会社代表者尋問の結果並びに鑑定人安達義治の鑑定の結果を援用。

3  甲号証の認否……甲第一ないし第四号証、第七号証の成立は認める、第五、六号証の成立は不知と述べた。

理由

一、原告がその主張のような会社であること及び原、被告間に昭和二七年八月(日の点は後述する)原告主張一の1ないし4の如き売買契約が締結されたことは、当事者間に争がない。

右契約締結の日については、原告は同月二七日、被告は同月二五日と各主張するところ、成立に争のない乙第三号証の一及び被告会社代表者尋問の結果によれば、両者間においては同月二五日に口頭で話がまとまり、同日付で後記の如く信用状が発行されたことが認められ、成立に争のない甲第一号証(原告より被告に対する本件註文書)の日付が同月二七日付となつている点及び証人井出正二の証言中同月二七日付で本件契約文書を作成したとの点は、いずれも右二七日に右二五日の口頭による契約を文書をもつて確認した趣旨であることが窺われ、他に右認定を左右する証拠はないから、本件契約は右二五日に成立したものと認められる。

次に、右契約の内容として、原告は、前記一の1ないし4の外同5のような定めがあつたと主張し、被告はその定めの内容を争つているが、成立に争のない甲第一号証、乙第一号証、乙第三号証の一によれば、原告主張の事実を認めることができ、他にこれを左右する証拠はない。

二、原告主張二の事実(信用状設定手続及び契約条項の一部変更の点)、及び三の事実中被告が右履行期に本件冷凍魚の船積をしなかつたこと、原告が被告に対しその主張のような催告及び条件付契約解除の意思表示をしたこと及び被告が右催告期間内にも右船積をしなかつたことは、当事者間に争がない。

三、ところで、原告は、被告の右本件冷凍魚の船積なる債務がその履行期において履行可能な状態にあつたことを前提として右解除の有効を主張し、被告は、これを争つているので、先ずこの点について判断する。

本件において、被告の債務とは、原告よりの信用状を得たうえ、所定期限までに本件冷凍魚を輸出のため日本港内においてアメリカ向け船舶に船積して給付するにあるところ、輸出貿易管理令及び同規則によれば、本件冷凍めかじきまぐろについては、これを輸出しようとする者はその輸出にあたり、輸出申告書に対して外国為替銀行の認証を得なければ通関の許可を与えられず、右許可がなければ輸出のための船積をすることができないことになるのであるが、その際、当該取引の契約内容と信用状の記載内容とがくい違つている場合、殊に契約における代金高が信用状における支払保証額を上廻つている場合には、原則として、そのままでは右銀行は申告書に認証を与えず、したがつて通関の許可も得られないことは、当事者間に争がない。ところで、これを本件についてみるに、本件契約における売買代金額が「FOB日本港船舶渡し総額八、四〇〇ドル」となつていること上記のとおりであるのに対し、原告の開設した信用状では右の点が「C&F日本港よりロスアンゼルス港までの運賃込総額一〇、一〇〇ドル」となつていることは当事者間に争がない。そこで、右FOB建がC&F建となつていることはともかくとして、右両者における売買代金額くい違いの有無の点をみるに、この点は、後者からその運賃額を差し引いたものを前者と比較することによつて明らかになるので、右日本港よりロスアンゼルス港までの運賃をみると、本件の商品たる冷凍めかじきまぐろについては一トン当りにして当時八五ドルであつたことは当事者間に争なく、しかして本件商品の総重量については、契約高である正味二〇トンの外、成立に争のない乙第八号証、鑑定証人稲脇修一郎の証言によつて成立を認め得る甲第五号証及び同鑑定証人の証言によれば、右商品は船舶にて輸送せられる場合にはその包装用の風袋の重量が加わつて標準約五パーセントの増量となることが認められるので、右総重量は結局二一トンとなる。したがつて、右運賃は右二一トンに前記八五ドルを乗じた一、七八五ドルとなるから、前記信用状記載の金額から右運賃を差し引いた額、すなわち本件商品の正味売買代金額たるべき額は八、三一五ドルとなり、本件契約におけるそれ(八、四〇〇ドル)よりも八五ドルだけ低額となるのである。したがつて、本件信用状は契約代金額全部の支払を保証していないことになるので、上述したところより明らかなように、右信用状の記載がそのままである限り、本件売主である被告は、その債務たる本件冷凍魚の船積を履行する前提たる銀行の認証及び通関の許可が得られず、結局その債務を履行することができない筋合である。

そこで、このような場合、被告の債務がその履行期において履行可能な状態になるためには、原告が右履行期までにその設定した信用状に所要の訂正を加えればよく、またそれは可能であることは明らかであるから、この点の経過をみるに、成立に争のない甲第二号証及び乙第五号証、証人小寺信儀、同井出正二の各証言並びに被告会社代表者尋問の結果を綜合すると、本件信用状が右のような状態であつたため、被告は右信用状を入手するや直ちに原告に対し、信用状の金額を契約額にあわせること及び船積期限を「九月中に一〇トン、一〇月中に一〇トン」と繰り延べざるを得ないこと等の諸点につき右信用状の記載の訂正方を申し入れたが、原告方では、右船積期限については直ちに信用状の訂正を行つたものの、金額の点については被告の再三の要求にもかかわらず、ついになんら訂正の措置を構ずる気配がなく(右船積期限訂正の点については、当事者間に争がない)、かえつて同月二二日頃に至つて原告よりの要請により被告は右信用状を返還することとなり、そのまま右九月末及び一〇月末の各履行期をすごしたことが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。右の事実によれば、本件信用状に対しては、本件契約の履行期までにその履行を可能ならしめる所要の訂正はついに加えられなかつたのであるから、被告の債務は、右の限りにおいては、その履行期において履行不能の状態にあつたものというの外ないのである。

ところが、これに対し、原告は、原告が本件信用状に訂正を加えなくても、他に銀行の認証及び通関の許可を得る方法があつたと主張するので、次にこれについて判断する。

原告主張の第一点は、対米冷凍まぐろ取引における商慣習及び信用状統一規則の規定の各範囲内で行う減量船積による解決法である。この点につき鑑定証人稲脇修一郎の証言によつて成立を認め得る甲第五号証及び同鑑定証人の証言によれば、対米冷凍まぐろの輸出取引においては増減五パーセント無異議の商慣習があり、また、信用状統一規則三五条(その存在は当事者間に争がない)により本件信用状の場合三パーセントの増減が許容せられるが如きであり、しかして本件の場合、上記認定のように信用状の支払保証金額が契約額に不足する額は八五ドル、本件商品たる冷凍めかじきまぐろにして四〇五ポンド弱(卸肉五切強)であつて、右は本件まぐろの全数量の約一パーセント位にすぎないから、売主たる被告は、前記許容の範囲内たる右一パーセント分の減量をすることによつて銀行の認証、したがつて通関の許可が得られることとなり、また、さきに認定したように分割船積をすることになつた後においては、第一回分(九月中に一〇トン)については信用状の支払保証金額に不足はないからそのまま船積ができ、第二回分(一〇月中に一〇トン)については上記のように一パーセント分の減量をすることによつて船積ができることとなり、以上いずれの場合でも被告がその債務を履行することが可能のようにみえるのである。しかし、右甲第五号証(鑑定書)は右鑑定証人稲脇修一郎の意見を記載した文書であるにとどまるし、また、右稲脇修一郎の証言はその主要な点において前後矛盾するところがあつたりするほか後記の証拠とくらべて直ちに採用しがたいところである。かえつて、成立に争のない乙第九、第一三号証、証人林昇太郎、同芝田喜男、同吉岡純一郎の各証言及び被告会社代表者尋問の結果を綜合すれば、むしろ、対米冷凍まぐろの輸出取引において五パーセント増減無異議の商慣習の存在することは認め難く、また、前記甲第五号証及び稲脇修一郎の証言において援用せられる信用状統一規則は、本件香港上海銀行の如きイギリス系の銀行には採用せられず、かえつてこれら銀行においては当該取引における信用状にapproximately またはそれと同義の語がない限り船積数量は厳格に契約高どおりでなければならないとしており、殊に本件信用状には、「注意書」と題し、売買契約の「諸書類が本信用状の条件と完全に一致して作成することが出来ない場合が生じ」たときには「適当な訂正」のない限り「支払を致し兼ね」る旨の信用状発行銀行の付箋(乙第九号証)がついているから、現実の問題として右減量の方法によつては外国為替銀行は認証をしないことが認められるのであり、また、上記のように分割船積をすることになつた後においても、なるほど第一回分だけをみればそれに相応する代金額は信用状記載の金額の範囲内にあるから金額に不足がないわけであるが、全体の割合から算出されるものには一致せず、第二回分について不足があり且つそれについて右と同じ理でもつて減量船積が許されないから、結局全体について契約額どおりの支払保証が確実でないことになり、銀行は第一回分についても認証に応じないと認められるのである。また、右認定に反する甲第六号証は、証人芝田喜男の証言及び乙第一三号証によれば、同文書の作成名義人たる日本冷凍食品輸出組合の真意に基いて作成されたものとは認め難いからこれまた採用することができず、その他右認定をくつがえすに足る証拠はない。以上の事実によれば、本件の場合、分割船積と変更したその前後を問わず、売主である被告が履行期において全体の約一パーセントの減量船積をする方法によつては、銀行の認証等を得てその債務を履行することができるということを得ないものである。

原告の主張する第二の方法は、被告が右以外の便宜的手段を執ることで、被告が外国為替銀行に対しその取引銀行の保証付の保証状を提出するか、または、まず輸出申告書を提出し、外国為替銀行が信用状開設銀行に電話で手形買取許可方を照会して許可を得たうえ、被告が原告及び開設銀行たる香港上海銀行サンフランシスコ支店と交渉すれば、認証が可能であるというにあり、証人林昇太郎の証言及び同証言により成立を認めるべき乙第一二号証の一、二の記載によれば当時右のような方法があつたことはこれをうかがい得るけれども、証人小寺信儀の証言及び被告会社代表者尋問の結果並びに本件口頭弁論の全趣旨によれば、本件信用状設定後原告から被告に対し右のような便法のあること及びそれによるべきことは何等通知していないのみならず、これが法令の定める適法な決済方式(標準決済方法)であるかどうかは疑問であつて(鑑定証人三井高実はこの種の便法の存することを供述していない)、仮に右便法を構ずることによつて銀行の認証を得たとしても、通関の許可をとることができるか否か疑問のあることが認められるのである。証人井出正二は当時被告会社に対し信用状を訂正しないでも便法でやれば心配ない旨告げたと供述するが、同証人のいう便法とは差額を円貨で払うということを指すことは同証言自体から明らかであり、このような方法が適法のものでないことは自明であるから、もとより右認定を左右するものでない。しかも前認定の方法そのものが被告の側だけで可能のものでなく、多分に買主たる原告及び信用状開設銀行の意向によつて左右される不安定のものたるを免れない。のみならず、そもそも上記判示のように、本件のような場合には、元来原告が契約に定めたと同一事項の記載をし売主の受取金額に不足のないような信用状を開設すればはじめから問題はないのに、これを誤つたものであり、いつたん誤つたとしても右信用状を訂正すれば足りたにもかかわらず、原告は何等右の措置を執らず、被告に対しまずもつてこのように不安定でしかも疑問のある便法を構ずることを要求することは、商取引、殊に国際商取引における信義則に反するものと解すべきであるから、被告はかかる手段をとるべき義務はないというべく、このような便法のあることをもつて被告の債務がその履行期において履行可能であつたとすることはできないものというべきである。

原告主張の第三点は、買主たる原告が銀行に対し信用状における不足金額を積み立て銀行の承認を得るという方法であり、鑑定証人三井高実の証言によれば右の方法によつても銀行の認証等を得ることができるものと認められるけれども、本件において原告が実際にそのような措置を構じたとの何等の主張、立証もないから右主張は理由がない。

なお、原告は、被告との従来の商取引においてこのように契約内容と信用状記載事項とがくい違つた場合には、信用状訂正の措置を構ずるまでもなく右に挙げたような便法によつてことを処理してきたというが、右を積極的に証する証拠はなく、ただ、被告会社代表者尋問の結果によれば、本件取引前に一度多少の便法を構じたことのあつたことが窺われるものの、その場合においては信用状記載の金額が契約額と充分見合つていたこと及び被告は右便法を構じたことによつてかえつて損害をこうむつたことが窺われるから本件に適切な前例ではなく、要するに原告のこの主張は上来認定するところになんらの影響を与えるものではない。

四、なお原告は本件信用状に関し原告の義務に属するものにおいてわずかな不履行があつたとしても、被告がこれによつてその履行を拒み得るのはそれに対応する部分に止まり、全体に及ぶものでないと主張するが、本件契約に定めた給付は可分であるとしても、その信用状との関係において輸出取引手続上はその全体について輸出の能不能の問題に帰することは前認定のところからおのずから明らかであるから、原告のこの点の主張は失当である。

五、以上要するに、本件事案においては、原告が履行期までに信用状の訂正或いは不足金額の積立等被告の債務の履行を可能ならしめる方法を何等構ぜず、他方被告は他にその債務履行を可能ならしめる方法を尽すべき義務を有しなかつたと認められるので、原告が履行期の経過以前に本件信用状を被告の手から回収してしまつたことを度外視しても、結局被告の債務はその履行期においてその責に帰すべからざる事由によつて履行し得る状態にはなかつたものというべきである。

したがつて、その余の争点に関する判断をするまでもなく、被告の債務不履行を前提とする原告の本訴請求は理由のないことが明らかであるからこれを棄却し、訴訟費用は敗訴した原告の負担として主文のとおり判決する。

(裁判官 浅沼武 小谷卓男 秋吉稔弘)

商業信用状に関する統一規則及び慣例

総則、D-文言の解釈

″Environ ″「約」若くは之と類似の文言

第三五条 右の文言は、指図中におけるその用法に従い、信用状の金額又は商品の数量若くは各個の商品の価額に関して一〇パーセントを出でざる過不足を許したるものと解釈す。

商品がその性質上、指定せられたる数量を精密に引き渡すことを得ざるものなるときは(例えば樽入の油、荷造を為さざる鉱物、荷造を為さざる若くは円筒中に容れられたる化学製品その他)、たとえ信用状の開設に当り重量又は数量が確定せられたるときといえども、三パーセント以内の過不足は許容せらるべきものとす。

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